嵐が丘

2005年5月1日 読書
嵐が丘を舞台に描かれる混沌が、
たった一人の人間の空想から紡ぎ出されたなんて脅威。
人間描写が優れた作品はたくさんあるけど、
ここまで気味が悪いほどに意志と感情をむき出しにする登場人物たちは、他では見られない。
彼らには、始めは嫌悪を、後に感動を覚えた。

ハッピーエンドもバッドエンドも期待できない(期待したくない)小説を読んだのは初めてでした。
物語の筋よりはむしろ、人間描写を楽しみたい一冊(上下二冊)。

『父と子』

2005年2月22日 読書
ちょっと前の話。

とある席で、好きな本のことを聞かれ、
自分は「ロシア文学をよく読みます。」と答えた。

すると、同席の一人が、
「ニヒリズムか〜。」と、ニヤニヤしながら一言。

そいつ、ぶん殴ってやろうかと思った。

それはさておき、
『父と子』の主人公の一人、バザーロフが好き。

自分の信念を最期まで貫き通そうとする姿勢(若さ?)が好き。

でも、恋情に信念が揺らぎそうになるのも好き。

そんなバザーロフが好き。

ニヒリズムうんぬんは抜きにして、ね・・・。
戦前、来日したドイツ人の著者が、日本人の師匠の下で弓術を身に付けるまでを描いたノンフィクション。

と書くと簡単だけど、
異文化同士の衝突・接近、国際交流の有り方などなど、
色々と考えさせられる名著だと思う。

個人的には、思考が「右」よりの人、もしくは旅行好きの人に特に読んでもらいたい。

著者の極めて客観的な日本文化への認識は、日本人にとってこそ目から鱗もの。
昨年、ブルーズ生誕100年ということで、色々盛り上がったらしい。

で、その余波は日本にも及んで、今も吉祥寺ではブルーズのドキュメンタリー映画が上映されてたりする。

でも、まさか漫画にまで・・・。

この漫画のタイトルは、言うまでもなく、ロバート・ジョンソンの"Me And The Devil Blues"から採られたタイトルだろう。
う〜ん、いいっすねぇ〜。

以下に個人的なお薦めポイントを列挙。

1、「ブルース」ではなく「ブルーズ」と言ってるところ。
2、ジューク・ジョイント(南部の黒人たちがたむろした安酒場で、ブルーズマンたちの活動拠点)の描写に迫力あり。熱気ムンムン。
3、主人公の名前が「ロバート・ジョンソン」ではなく「RJ」。(作者にとってロバート・ジョンソンは軽々しく扱うべきではない不可侵な存在ということ、多分。ちなみに他のブルーズマンは実名。)
4、「俺たちに明日はない」を観たことがある人なら、ニヤリ。
5、定価が666円。(値段の高低ではなく、それが意味するものが。)

ブルーズをテーマにしてはいるんだけど、決してテーマだけが先走りしてなくて、
他の要素も高レベルにあると思います。
(個人的には黒の使い方が非常にうまいと思う。)

時間とお財布に余裕があれば是非。

独り読書

2005年1月24日 読書
今日は、先日購入した宮沢賢治の詩集をぼーっと読んでいた。

詩について全然詳しくないのだけれど、
無機的な言葉が、豊かな自然描写の中に突然出てくるのが面白いと思った。

例えば、
「雲はたよりないカルボン酸」とか、
「零下二千度の真空溶媒」とか。

だが、無理してそういう表現をしてるわけではなく、
自分自身のボキャブラリーから自然に飛び出してきたもののような印象を受けた。

だから、本当に正直な詩を書く人なんだなぁと思った。

まぁ、嘘つきな詩人は評価なんかされないと思うけど。